ロイター 2020/6/4/8:00

ロイター通信

 



今日の株式見通し=強い基調維持、買い戻しで弾み加われば2万3000円トライも

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"きょうの東京株式市場で日経平均株価は、強い基調を持続することになりそうだ。前日の米国株式が上昇したほか、外為市場でドル/円が円安をキープしていることが、日本株を押し上げる要因になる。過熱感が強いものの、景気回復に対する期待がそれに勝るという。引き続き買い戻しがリードする展開になり、弾みが加われば日経平均は2万3000円をトライする場面もあるとみられる。

日経平均の予想レンジは2万2600円─2万3000円。

2日の米国株式市場は、全米で激化する抗議デモや新型コロナウイルス流行を巡る警戒感は漂うものの景気回復期待が相場を押し上げて続伸。ダウ平均株価.DJIは527ドル値上がりし、ナスダック総合指数.IXICも過去最高値に迫った。

米供給管理協会(ISM)が発表した5月の非製造業総合指数(NMI)も45.4と、4月に付けた2009年3月以来、約11年ぶりの低水準から改善。ただ、景気拡大・縮小の節目となる50は依然下回った。

シカゴCME先物終値は2万2900円台まで上昇しているが、 日経平均はこれにサヤ寄せして始まった後、買い戻しが活発化した場合、上値を追い2万3000円を回復する可能性もある。

市場では「短期筋の買いだけではなく、景気のモメンタム改善から中長期的な運用資金も流入し始めている。過熱感が強いのは確かだが、こうした需給を踏まえると、高値警戒から押してもすぐに買い直されるのではないか」(東海東京調査センター・シニアストラテジストの中村貴司氏)といった声も聞かれた。
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リスクオンの円安が復活か、米中衝突には要警戒

6/4

"世界の主要株価指数は今年3月に底打ちして上昇してきたが、ドル円は株価底打ちのタイミングで頭打ちとなって下落した。従来のリスクオンの株高・円安という動きに反し、リスクオンの株高・円高という動きとなったわけだ。しかし、リスクオンで円高、リスクオフで円安、という相関へ変化したと判断すべきではないだろう。

<株価とドル円の相関変化、背景にドル要因>

ドル円は、2月から3月上旬にかけての株安局面では下落したが、3月中旬に株安が続くなかで上昇に転じ、下旬に株高に転換するなかで下落した。このように株価とドル円が順相関から逆相関へと変化した原因は、ドルの需給と金利の動きにある。3月中旬には、リスクオフのドル需要が急速に高まり、ドル需給がひっ迫したため、米金利が上昇してドル高・円安が進んだ。米連邦準備理事会(FRB)が他の主要中銀と協調してドル供給を拡充した結果、3月下旬にはドル需給が緩和し、米金利が低下するとともにドル安・円高が進んだ。

つまり、株価とドル円の相関を変化させたのは、ドルであって円ではない。例えば、豪ドル円などのクロス円は、3月下旬に株価が底打ちするまでは下落が続き、株価が底打ちすると上昇に転じた。株価とクロス円の順相関が変化したわけではないのだ。

<ドル需給安定化でドル円はクロス円と連動へ>

ドルと円のベーシス・スワップ・スプレッドが示すように、ドル調達コストは3月に急上昇した後、4月にかけて急低下した。ドル需給は急速にひっ迫した後、急速に緩和したわけだ。その後、ドル調達コストは低下に歯止めがかかり、5月にかけてやや上昇した水準で安定するようになった。これは、ドル需給が安定化してきたことを示している。

それとともに、株価とドルの関係も変化しつつある。3月から4月にかけては、株安時にドル需給ひっ迫で金利上昇・ドル高となり、株高時にドル需給緩和で金利低下・ドル安となり、株価とドルの逆相関が強まった。しかし、ドル需給が安定化し始めた5月には、株高時に金利が上昇し、ドル安が進みにくくなった(株価とドルの逆相関が弱まった)。

一方で、株高・円安、株安・円高という株価と円の逆相関は続いており、株価とドルの逆相関より強くなった。そのため、株高時に円安がドル安を上回る(ドル円が上昇する)ケースや、株安時に円高がドル高を上回る(ドル円が下落する)ケースが増えてきた。つまり、ドル円を主導する要因がドルから円へと変化してきたのだ。

3月から4月にかけてはドル相場との連動性を高めたドル円が、5月にはクロス円との連動性を高めつつある。具体的には、ドル相場が下落する一方で、クロス円が底打ちし、ドル円はクロス円とともに上昇し始めている。ドル円は、リスクオンで円安、リスクオフで円高、という従来の動きに戻りつつあるのだ。

<基本シナリオは緩やかなリスクオンの円安傾向>

では、市場はリスクオンとリスクオフのどちらに向かうのだろうか。少なくとも当面は、リスクオンに向かいやすいように思われる。なぜなら、新型コロナウイルスの新規感染者数の減少を受けた経済活動の再開が、中国、欧州、米国、日本で広がり始め、それと同時に景気回復への期待が高まり始めたからだ。すでに中国では景気指標が改善に転じ、市場予想を上回るケースが増えているが、予想に比べ弱かった米国やユーロ圏の景気指標にも、同様の兆しが出てきた。

もちろん、経済活動再開とともに新型コロナウイルスの新規感染が再拡大するリスクはあり、米国の新規感染者数がなかなか減らないのも、経済活動再開が理由と思われる。各国での段階的な制限措置緩和には時間を要し、急速な景気回復は期待しがたい。米国では、これまでの株高と予想利益の下方修正により株価の割高感は強まっており、大幅な株高が期待しにくい面もある。ただ、景気指標が市場予想を上回るとともに、企業の予想利益が上方修正されるケースも増えるだろうし、リスクオンは維持されやすくなるはずだ。

それに、新型コロナウイルスのワクチンが当初想定よりも早期に実用化されるとの期待が高まると、いくら足元の感染鈍化や景気回復が遅くても、先行きの感染減少と景気回復への期待が高まりやすい。量産される前であっても年内にワクチンの実用化が始まりそうであれば、リスクオンを促す要因となるだろう。感染第1波に匹敵するような第2波が到来しない限り、基本的には緩やかなリスクオンの円安傾向となる可能性が高い

円高リスクは米中対立の激化>

ただ、円高リスクとして、米中対立の激化に注意すべきと考える。11月に米大統領・議会選挙を控えたトランプ政権としては、景気回復を通じて国民支持率を高めたい面はあるはずだが、景気は急速には回復しにくいだろうし、経済活動再開を急ぎ過ぎれば、感染が再拡大して支持率低下につながる恐れもある。民主党が知事の州に比べて共和党が知事の州は経済再開を早く進めているケースが多いが、新規感染者数が増えているケースも目立つので、景気回復だけに政策の軸足を置くことは難しいだろう

そうなると、米国民に反中感情が高まっているなかで、トランプ政権は対中強硬姿勢を強めることで支持率上昇を図る可能性は否めない。米国が対中関税を引き上げることで米中貿易合意が破棄されれば、米経済や国民支持率を押し下げてしまう恐れがあるので、米国は中国企業を対象にした輸出入規制強化や在米活動制限を進めるのではないか。

米国が対中制裁を行えば、中国が対抗措置をとる可能性は高い。中国当局人民元安を容認し続ければ、米中通商合意に反していると米国は非難するだろうし、米中対立は激化しやすくなるだろう。米中対立の激化が抑制できれば、緩やかなリスクオンの円安傾向が維持されると見るべきではないだろうか。

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